
「大人の学び直し」のプログラムでは、リベラル・アーツ学習として読書会を行っています。特に古典作品の読書会は好評で、長年続けてきています。多くの著名人が座右の書と位置付けているものには古典が少なくありません。古典が書かれた時代は、確かに現在とは大きく異なっているかもしれませんが、長い年月もの間、読み継がれてきた古典には、現代を生きる我々にも大変参考となることが数多く記載されています。
「大人の学び直し」プログラムでは、只今「世界最高の戦略指南書」といわれる 『孫子』 に取り組んでいます。前職のときにも『孫子』を何度が読んだことがありましたが、今の立場になってから読み返してみると、受験に役立つ記載を多々発見しました。今の受験生にも役に立つのでは?と思い、「受験必勝法」と題してご紹介したいと思います。ただし、個人的な解釈が含まれているということは、ご承知おきください。
戦わずにして勝つ

『孫子』の真骨頂ともいうべきものが 「戦わずにして勝つ」 です。これを聞いて、???と思われる方も多いのではないでしょうか。『孫子』では「戦わなくて済むのであれば戦わない」を大原則としています。しかし「戦わなければならないのなら負けない」とも説かれています。つまり、「まずは受験するか熟考せよ!するなら負けるな!」ということになります。
それではどうしたらよいのか?さらに読み進めて行くと、「勝利を得る者は勝利を得てから戦いを始める。負ける者は戦いを始めてから勝利を求める。」という一節があります。ここでは「勝敗の8割は準備で決まる。準備を怠るな!」という感じでしょうか。受験をはじめとする様々な試練を経験してみると、これはとても的を射たものだと納得いただけるのではないでしょうか。しかし試練などの経験の少ない中高生にとっては、ピンとこないところがあるかも知れません。「準備はし過ぎるくらいでちょうどよい」と考えてもらうくらいでいいのではないでしょうか。
受験とは人生の一大事

『孫子』は中国の戦国時代である春秋時代の作品です。人の生き死にや国の存亡をかけた戦いについて深く考察されたものです。この戦国時代の戦いと受験を直接イコールとして考える訳にはいかないかも知れません。しかし多くの方が感じているのではないかと思いますが、受験によって人生が左右されることも事実です。さらに人生100年時代ともいわれる現代では、受験におけるボタンのかけ違いによる人生への影響は、以前に比べると大きいものになる可能性も高いと思われます。つまり、「受験は人生における重大な選択」であると捉えることができるのではないでしょうか。そこで以下の5点(優先順)について考えていただきたいと思います。
目的: なぜ進学するのか?
心身: 受験は体力・メンタル勝負!受験に耐えられる心身の状態か?
環境: 学習環境は整っているか?
資質: 能力・学力は十分か?
方法: 入試制度・方式などを理解しているか?
受験にはお金がかかる

次に資金面です。受験にはお金がかかります。それだからこそ、「負けない」ことが大切です。この点を考慮すると、以下に挙げる3点は少なくとも考えていただきたいと思います。
一点目は「投資対効果」です。学生の皆さんが懐を痛めて受験資金を払うことはほとんどないでしょう。しかし、大切なお子さんの将来のための投資とは言え、親御さんとっては大きな痛手となります。学生の皆さんも受験をする以上、このことはしっかりと理解しておくことが大切です。親御さんの努力に報いるためにも、受験に対する目的意識は明確にしておくことは必要ではないでしょうか。
二点目は「長期戦に持ち込まない」です。私自身は一浪していますので、親には大きな負担を賭けました。しかしお蔭さまで、自分のやりたい道を歩むことができました。ただ、二浪・三浪となると資金面もさることながら、本人のメンタルにも影響しかねません。長期戦に持ち込まないためには何をすべきか、よく考える必要があるでしょう。皆さん持っている時間は同じです。学習効率を向上させること、高1など早期から準備を開始すること、などなど。採ることのできる策は色々とあるのではないでしょうか。
三点目は「覚悟を決める」です。「覚悟を決める」ということにピンとこない方も多いかと思います。別の言い方をすると、「代償・犠牲を払う」ということです。受験のためにこれまでしていた習慣を封印することはよくあることです。今だと、ゲームやスマホの時間を制限する、SNSの利用をしばらくやめる、などをよく耳にします。先日知り合いの小学生が中学受験のために、好きだった「レゴ」をやめると言って当塾に寄贈してくれました。熾烈な中学受験に挑むための小学生なりの覚悟を目の当たりにしました。
分析(志望校を知る)

私が高校・大学受験をした時代、インターネットなどは当然のことながらありませんでした。志望校に関する情報と言えば、予備校が発表する偏差値や親・親戚・知人などからの評判などが得られる情報のすべてに等しかったと思います。このように少ない情報をもとに志望校を決めていました。
これに対し情報社会である現在は、インターネットをはじめとして情報を得るための術が多々存在します。さらにオープンキャンパスや模擬授業、さらには学食体験などが企画されることも少なくなく、学生生活をイメージするのに有益な情報が盛りだくさんです。また、偏差値・入試科目・共テ/二次配分・合格最低点などの入試に関する情報もさることながら、調べる気になれば、学部・学科だけでなく、研究室やゼミに関する情報や研究内容まで閲覧することが可能です。このような情報を手にすれば、皆さんにとって大学での学びや研究をより鮮明にイメージできるようになります。さらには大学に対するワクワク度にも大きく影響することになるでしょう。まずは相手を知ることを始めてみてはいかがでしょうか。
今回は世界最高の戦略指南書である『孫子』から紐解いた「受験必勝法」の一部をご紹介させていただきました。次回は続編として、実践面についてご紹介したいと思います。