皆さんは、とてもショッキングなタイトルの『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著)、またその続編『AIに負けない子どもを育てる』を読まれたことがありますか?様々なデータをもとに、「現代の子どもたちの読解力が危機的状況にある」ことが記されています。収載されているデータを見て、私はタイトル以上のショックを受けたことを今でも鮮明に覚えています。それは書籍が発売された2018~2019年のことです。その後、現在のように子供たちを指導するようになって、これら2冊に書かれている内容を改めて実感し、危機感を覚えています。今回は、注意すべき「読解力の低下」についてご紹介したいと思います。
現状
小中高の学生を指導しながら最近特に気になっていることは、教科書が読めていない学生が半数くらいいる、ということです。識字率の高い日本ですから、正確には教科書に書かれている文章は読めています。しかし、何が書かれているのか、その内容や主旨を理解できていない、と言った方が良いでしょう。そのため、何が分からないかを尋ねても、「何が分からないかも分からない」といった感じです。多分、このような状態を繰り返してしまっているのでしょう。多くの教科の学びが積み上げですので、どこかで躓いてしまうと、その後は全く分からなくなってしまいます。このようなことが続くことで、自主的に理解することを諦めてしまい、成績が伸び悩んでしまっている学生は意外に多いのではないでしょうか。
続編である『AIに負けない子どもを育てる』に読解力を測る「リーディングスキルテスト」体験版が収録されています。先日、当塾の中高生に何問か解いてもらったところ、難なく解く学生もいましたが、何が書かれているか分からないと訴える学生もいました。思いの外、読解力の問題は広がりを見せているのかも知れません。
コミュニケーション障害
教科書のように文字化されたものが理解できないとなると、当然のことながら、口頭での言葉のやり取りを理解することはさらに困難を極めます。特に言葉は発した先からなくなってしまうため、後で見返すことができません。そのため、言われていることを瞬時に理解する力、つまり読解力が文章を読むとき以上に求められると言えます。
このように考えると読解力が十分でなければ、コミュニケーション障害はいとも簡単に起こるのではないでしょうか。確かに、日々中高生とやり取りをしていると、何を言いたいのか分からないことがあります。特にチャット・メールでは、書かれている内容が意味不明なもの、やり取りが成り立っていないもの、などをよく見かけます。チャット・メールの性質上、不備のある記載内容を正しく理解することはかなり骨の折れる作業です。そのため、途中であきらめてしまったり、憶測や先入観から判断されたり、このようなことはある意味致し方のないことかも知れません。しかし、2人以上の人が集まれば、お互いが理解し合い、何かを成し遂げようとすれば、コミュニケーションはとても大切なツールとなります。良好な結果を望むのであれば、根底にある読解力の重要性をご理解いただけるのではないでしょうか。
読解力の低い人の特徴
読解力の重要性を理解していただくために、あえて「読解力の低い人の特徴」を挙げてみたいと思います。ここでは私の経験した社会人を例といたしました。
理解力が低い
- メールや資料を正確に読み取れない・理解できない。
- 人の話を理解できない。
表現力が低い
- 自分の考えをまとめられない・正確に伝えられない。
- 的確な質問ができない。
- 相手の意向に沿って表現法を変えることができない。
判断力が低い
- 状況を的確に捉えられない。
- 理解が不十分なまま決めつけ、判断してしまう。
挙げればきりがありませんが、このような人、頭に思い浮かぶのではないでしょうか。読解力は先に挙げたようにコミュニケーションに影響します。読解力の低さは、誤認したり、誤解を生んだりなど、トラブルのもとになりかねません。さらに、読解力はその人自身の思考力にも直結しますので、先入観や他者への許容度などにも影響します。このような社会人にならないためにも、読解力を高めていただきたいものです。
読解力を向上させるには?
それでは、どうやったら読解力を向上させることができるのでしょうか?
解決法として読書がよく挙げられます。読書は読解力の向上に一役買っていることは事実です。しかしここで考えておきたいことは、多くの学生は日本語を読むことができていますが、書かれている内容を十分に理解できていない、との事実です。そのため、ただ漫然と読書をしても読解力を向上させることは難しいと思われます。語句と語句のつながり、さらには文と文のつながりを理解しながら精読するトレーニングが必要です。まずは短い文章からで十分です。精読をしながら、つながりや論理構成を把握するトレーニングをしてみてはいかがでしょうか。最近では、読解力に特化した書籍も出版されています。これらを取り入れることで、皆さんの読解力向上の一助となってくれると思います。
最後に(保護者の皆さまへ)
先に挙げたような社会人のようにならないためにも、お子さんの読解力を早いうちに高めておくことをお勧めします。できれば小学生、遅くとも中学生のうちに。
論理的思考力を大切にしているAWAKEでは、読解力向上させる指導を行っています。もしご興味がございましたら、ご相談だけでも結構です。お気軽にお問い合わせください。