
「英語をどうやって勉強したらよいのか?」「英語の成績を上げるにはどうしたらよいのか?」「英語長文を読むにはどうしたらよいのか?」などなど。仕事柄、英語の勉強に関するこのような質問をよく受けます。万能薬・特効薬といったものではありませんが、私自身の経験から培った効果の期待できる勉強法がいくつかあります。これらについて、ご紹介したいと思います。
第一回として、「英和辞典を活用する」についてご紹介します。それも電子辞書ではなく紙の辞書です。しかも、簡易弾ではなく分厚い・重たい辞書です。「紙の辞書?時代遅れ!」「学校で電子辞書を買ったのに!」「単語帳ではだめなの?」などなど、多くの方からこのような批判の声が上がりそうですが・・・。ペーパーレスが推進される時代に逆行していますが、それ相応のメリットがあります。
派生語を一網打尽に
私が紙の英和辞典の活用をお勧めする最大のメリットとしては、派生語を一網打尽に捉えることができるところです。紙の辞書は見開き1ページもしくは前後のページをめくるだけで派生語を簡単に見つけることができます。
例えば、形容詞の「real」を引いてみると、以下のような汎用性の高い派生語が見つかります。

real (形) 本当の
really (副) 本当に
reality (名) 現実
realize (動) 認識する
realization (名) 認識
realistic (形) 現実(主義)的な
realism (名) 現実主義
realist (名) 現実主義者
real estate (名) 不動産
日頃からこのような派生語を押さえるように心がけると格段に語彙力が向上します。これまで指導した受験生たちも紙の辞書の利用については最初半信半疑でした。しかし徐々にその効果を実感するようになると、受験勉強に紙の英和辞典を積極的に取り入れてくれるようになりました。
重要単語・熟語をハイライト
ここで受験生にお勧めの英和辞典活用法をご紹介いたします。それはあらかじめ単語帳に載っている単語・熟語を辞書で調べてハイライトしておくことです。具体的には、上の写真にあるようにハイライトしておくことです(少し大変ですが、お勧めです)。あらかじめ辞書にハイライトしておくと、辞書を引くたびに重要単語・熟語を目にすることになります。その都度確認することで記憶の定着度が格段に上がります。また英語を学習した際に出てきた新出単語・熟語を追加していけば、オリジナルの単語帳としても活用できるでしょう。
豊富な例文
辞書には単語の意味以外に様々な情報が収録されています。単語の変化形、具体的には動詞の変化形(過去形・過去分詞・現在分詞など)や名詞の変化形(三単現のs)、さらに熟語や発音記号など。これらはとても役に立つ情報ですが実は単語帳にも収録されていることがあります。
単語帳と大きく違う最大の特徴は収録されている例文の豊富さです。単語帳は紙面の関係から例文があまり収録されていません。単語帳は受験のために無駄を極力そぎ落としたようなもので、短時間に必要最小限の単語を学習するのに最適なツールです。しかし、英語を理解することに重きを置くのであれば、辞書はとても有用です。
また、意味の分からない単語があれば辞書を引くことになります。しかし、そのときに単語の意味だけでなく使い方が分からないことも往々にしてありませんか?このような場合には例文が大変に役立ちます。私自身も単語を調べながら例文を参照して、「こうやって使うのか~」と合点のいくことがよくあります。そこで納得できた例文が、私自身がアウトプットする英語の基本例文になっていることも多々あります。辞書を使われるのであれば、例文を是非参照してみてください。
電子辞書との比較
かつて私は電子辞書派でした。2002~2004年にかけてサンフランシスコに駐在した際にポケットサイズの最新の電子辞書を購入して活用していました。確かに随所で活躍してくれたのですが・・・。画面が小さく映し出される部分が限定的なため、すばやく全体像をつかみ取ることができませんでした。全体を見ようと長々とスクロールせざるを得ませんでした。さらに関連する派生語まで調べるとなるとかなりの時間を要し、辟易とした覚えがあります。そのとき、机に常備していた紙の辞書を引き、見開き1ページで全体像をつかめる利便性に感心したことがあります。
電子辞書では引くには単語を入力、または部分入力でお目当ての単語に行き着くことができます。これに比べると紙の辞書は引くのに慣れが必要です。慣れていないと電子辞書より少々時間がかかってしまいます。私の場合、紙の辞書に慣れてしまえば、電子辞書との時間差はさほど気になるほどでなく、そのとき以来紙の辞書を愛用しています。
また最近、教育にデジタルを積極的に導入してきた「教育先進国」であるフィンランドが紙の教科書を復活させたとのニュースがありました。10年ほど前でしょうか、とある有識者の方から「デジタルより紙の方が記憶への定着がよく、そのうちにデジタルから紙への揺り戻しがあるだろう」と伺っていました。まさにこのような方向になりつつあります。確証はありませんが、ひょっとしたら電子辞書より紙の辞書の方がよいのかも知れません。
指導に活用している英和辞典
現在、私が指導に使用している辞書は以下となります。
【高校生以上用】
- スーパーアンカー英和辞典
使っているものは娘のお下がりの第4版です。既に第5版や第5版(新装版)も販売されています。重要な単語などは色分けされており、さらに頻度により文字の大きさが異なる工夫がなされています。他の英和辞典もそれぞれ特徴があり、自分に合ったものを選ぶことをお勧めいたします。
【中学生用】
- ジュニアアンカー英和辞典
以前はニューホライズンを使っていたのですが、新調する際、実際に書店で見比べてジュニアアンカーにしました。この辺りは好みですので、ご自分に合ったものを選ばれると良いでしょう。

英英辞典のすすめ
サンフランシスコに駐在したときから英英辞典を使っています。先に電子辞書を活用したと記載しましたが、実はその当時、電子辞書と紙の辞書の英英辞典を使っていました。駐在員の日本人仲間や現地採用のバイリンガルの日本人スタッフなどから強く勧められて使うようになりました。それは英語と日本語ではニュアンスが違うからです。受験勉強で出題される平均的な英語長文では英英辞典を活用する必要はほとんどありません。しかし、レベルの高い英文を読み解いたり、筆者の意図や考えなどに触れようと思うとニュアンス的な要素も理解する必要があります。このような場合、英英辞典が活躍してくれます。これは日本語を深く理解したいときに国語辞典を引くのと同じようなものです。
現在私が使っている英英辞典がOxford Paperback Dictionary & Thesaurusというものです(写真)。類語が収録されているもので、一つの単語を引くと類語も一緒に調べられます。ある意味を成す単語を一つの群として捉えられるため、語彙力を高めるためにも有用です。
英英辞典は上級者向のものと思われる方は多いかも知れませんが、今はアプリを使うことで簡単に英英辞典にアクセスできます。一度、気になる単語などを調べてみて、英英辞典に対する認識を高めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
英語の有効な勉強法として「英和辞典(紙)を活用する」についてご紹介させていただきました。私自身の経験から効果が高いと考えられる英語勉強法です。語彙力や英語の理解力をアップさせるにはとても有効かつ実績も得られています。よろしかったら是非お試しください。