前回、「英和辞典(紙)の効果」についてご紹介させていただきました。今回は効果的な英語勉強法第二弾として「音読」についてご紹介いたします。
「なぜ音読なのか?」と疑問に思う方も多いかと思いますが、音読の効果や重要性を目の当たりにした様々な体験談を交えながらご説明させていただきます。
カリフォルニア駐在中
2002~2004年にサンフランシスコに駐在しました。家族を帯同したため、当時、小学生の息子と幼稚園の娘を平日は現地校、週末は日本人学校に通わせました。日本語もままならない2人は英語ばかりの現地校に放り込まれ、さぞかし苦労したことと思います。しかしこの間、特に娘の英語力の伸びは飛躍的なものがあり、現地校の先生や周囲のお母さんたちからも良く褒められていました。
感覚的に女性の方が男性に比べて言語能力が高いとの印象がありました。しかし彼女の英語力が伸びたベースには、現地校の先生からの「家で音読するように!」との指導にあったと考えられます。現地校の先生に音読の効果について尋ねると、先生曰く、「音読することにより、単なる知識だったものがより実践的に活用できるものになる」とのことでした。また、現地のバイリンガルの仲間からも同じようなことを何度も耳にしました。
アメリカは移民の多い国だけあって、英語を母語としない人が英語を学習するための環境が整っています。当時、アメリカの学校のイベントなどに行くと、子供向けの本がセットになって売られていました。それもレベル別で。子供たちの英語の上達度に合わせって購入でき、また俗に言うペーパーバックであることからとても安価に提供されていました。早速、このようなペーパーバックを購入して子供たちの音読学習に活用すると、みるみるうちに英語が上達したことは言うまでもありません。
我が子で実証された音読の効果。「もし我々の英語学習に音読を取り入れると、英語の力を伸ばすことができるのではないか?」と考えることは自然の流れです。
帰国後
帰国後、私は新しいチームに配属され新たなるプロジェクトを担当することになりました。チームメンバーからアメリカ帰りの私への質問は仕事のことではなく、「どうやったら英語を伸ばすことができるのか?」のように英語に関するものばかりでした。これは日本人が英語に興味があるというよりも英語に対する苦手意識の強い表れのように感じ、急遽大学の研究室などで実施されている英語論文の輪読会を定期的に開催いたしました。当然、音読を取り入れました。しばらく実施することで参加者の英語力は徐々にアップしていきました。そこで進めていたプロジェクトの成果を学術論文として発表し、最終的には博士号を取得する研究者をくつろうと提案したところ、輪読会で頭角を現し始めた若手のひとりが賛同してくれました。数年後、彼はめでたく博士号を取得し、その後すぐに共同研究先のカリフォルニアにある研究所に2年間の派遣が決まりました。輪読会での音読をきっかけとして実践力を鍛えることでビジネスの現場での活躍につながった一例です。
人財育成担当時
前職で最後10年間は人財育成チームを立ち上げ、最前線の現場での経験や知識を生かしながら次世代グローバルリーダーの輩出に尽力してきました。その間、当然のことながら英語教育にも携わり、英語力を強化する様々なプログラムの企画・設計などを行ってきました。その過程において外国人講師やバイリンガルスタッフらと議論の場を数多く持ちましたが、やはり音読の重要性がたびたび唱えられました。
ビジネスでは英語を話すことや書くことに重きが置かれますが、このような技術を向上させるためには、その元となる利用できる英文を吸収できているかが重要となります。つまり、如何に多くの基本となる例文のストックを持っているか、これがカギとなります。基本例文のストックがあれば、語彙を入れ替えることでいいたいことを言ったり書いたりできます。このような基本例文のストックを増やすためには音読が有効であると彼らは言うのです。実は我々が日々使っている日本語についても同様なことが言えるのではないでしょうか。
高校・大学受験指導
Learning Base AWAKEを主宰する前、趣味の一環で近所の中高生の受験勉強を見ていました。英語が不得意科目で長文読解に苦労している学生を何人も指導しましたが、音読によりメキメキ力をつけていきました。特に前回ご紹介した紙の英和辞典を併用することでさらに効果が上がりました。学生からは「こんな勉強で大丈夫なの?」と疑問の声がよく上がりましたが、1~2か月ほどすると「英語が分かるようになってきた」「この勉強法、他の子に教えたくない!」などとの反響が出るほどでした。音読は即効性こそありませんが、着実に実力をつけることのできる良い方法であると確信した次第です。
まとめ
今回、音読の重要性や効果を私の体験談を交えながらご紹介させていただきました。主観の要素も拭いきれないため、興味ある方には音読を試していただき、その効果を体感いただければと思います。
予備校英語講師として有名な安河内哲也先生も「音読により4技能(リーディング、スピーキング、リスニング、ライティング)が向上する」と言われており、先生の著書である「ハイパートレーニング」シリーズは音読の効果を体感できる逸品だと思います。どうしても自己流の音読だと間違った発音を覚えがちになりますが、付属CDの音源を活用すれば解消できます。最近では音源付きの問題集が数多く発売されていますので、気に入ったものをお使いいただければと思います。
英語の勉強に音読を取り入れることで、皆さんの英語力が向上することを切に願っております。